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Clinical Trial 速報 「VALUEその結果の真相に迫る」 ESH Express News Web速報 第14回 欧州高血圧学会
 

脳卒中・心筋梗塞予防に降圧を超える効果がバルサルタンでは証明できなかった

自治医科大学循環器内科学
教授


島田 和幸 氏

アムロジピンの健闘は24時間血圧コントロールの力の差が現れた結果か?

発表を確認する以前、このVALUE試験には大きく2つの意味があると感じていました。
1つにはマーケットの問題です。

長時間作用型Ca拮抗薬のアムロジピン。AII受容体拮抗薬のバルサルタン。常に比較対照される注目度の高い降圧薬同士の比較試験で、その結果の影響力の大きさに関心がありました。

また、もう一面は、もっとサイエンティフィックなもので、高血圧治療の中に「血圧を下げれば下げるほどいい」という見解と「達成した血圧値が同じであれば薬剤別に違う効果が生じる」という見解の相克を見る試験である、ということです。しかも、今回の試験デザインは、後者の立場で設計された点で興味が尽きませんでした。

私としては、より低く血圧値を下げようとする、降圧を重要視する見解は、最近の多くのメタアナリシス(Staessen氏のメタアナリシスやBPLTTCなど)ですでに証明されているため、かなり定説化しつつあると感じていました。

一方、AII受容体拮抗薬が盛んに唱えている「降圧以外の効果」に関しては、糖尿病や腎疾患などの患者では、エビデンスがそろってきているとはいえ、脳や心臓の保護に関してはまだまだ不十分と感じていました。

このような立場をとりながら、この試験結果を迎えたのですが、なぜこのような立場で考えていたかというと、その背景には、HOPE試験の対象者と今回の患者背景が似通っていたことによると思います。HOPE試験ではACE阻害薬の実薬群と対象群の血圧値のわずかな差が、虚血性心疾患発症の差として有意に現れたため、一般的にはそこに「RA系薬の降圧以外の効果」が存在すると考えられていたわけです。しかしHOPE試験でも生じた血圧の微妙な差、実はこのごくわずかな血圧の差異というものは、24時間の血圧を正確に反映しておらず、本当は血圧の管理面で、かなりの相違が生じているのではという疑念があったのです。

今回のVALUE試験でも、バルサルタン側の思惑では「降圧以外の効果がAII受容体拮抗薬には存在する」という仮説を立証するために、血圧値を同一に設定しようとしたわけですが、結局それは実現できなかった。随時血圧で2mmHgも違うとすると、24時間血圧ではさらにその差は広がっている可能性があります。

その結果、「設定条件が崩れた試験」として、虚血性心疾患のイベント発症や死亡率を比較した一次エンドポイントにおいて、アムロジピン群とバルサルタン群の同等性が得られたのではないかと推測しています。

 

アムロジピンとバルサルタンの血圧値になぜ差異が生じたのか

今回の成績で注目すべきなのは、対象患者に白人が90%近くいたのになぜ到達血圧値に差が生じたのかということです。特に治療初期の1カ月目から半年あまりの2群間の血圧値の差異が大きく、結果的にその差が一次エンドポイントのアムロジピンの優位性に大きな影響を与えたという解析が行われていることから、アムロジピンの降圧効果に対して、そしてAII受容体拮抗薬の降圧作用について、今一度われわれが認識を改める必要があるかも知れません。

少なくともアムロジピンは、この試験結果から、従来考えられていた降圧薬の適応の人種差よりも、さらに広い汎用性を有する「ユニバーサルな高血圧の治療薬」と考えるべきだと思います。

 

厳格で速やかな降圧こそがイベント抑制に必須である

また今回、各イベントを発症までの時間単位で計測する解析法を行っていますが、この解析法は斬新で、治療開始からどの程度降圧が達成されているかという、薬剤の効果を如実に表現したものとなったと思います。この点も、今回の試験で注目すべき点でしょう。

対象となった虚血性心疾患のハイリスクの患者さんは、時間経過とともにさまざまなイベントが生じてきます。そのようなハイリスクの患者さんに対して、有効な薬物療法を速やかに実施すべきだというその具体的な数値を、このVALUE試験は実際の時間データとして示すことができた貴重なエビデンスといえます。

これまでは「速やかに」といいながらも、その具体的な指標に欠けていました。しかしながら、VALUE試験では半年以内で差がついていますので、ハイリスク患者には最初の1カ月以内から積極的に降圧を開始すべきでしょう。また、そのような治療指針で考えた場合、アムロジピンのような長時間型Ca拮抗薬が、脳卒中ばかりか虚血性心疾患においても有効であって、AII受容体拮抗薬が望んでいた「降圧を超える降圧薬の効果」は、「厳格で速やかな降圧」の前にその力をほとんど発揮できなかった試験だったといえるのではないでしょうか。



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