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e-cancer:血液がん ASH 2024:ケトン食はCAR-T細胞機能を高め、腫瘍制御を改善する

27 Dec 2024

マウス、ヒト組織、健康なボランティアを対象に実施された一連の研究結果は、ケトン食が CAR-T細胞療法の有効性を高める可能性があることを示唆している。

この結果は、ケトン食を摂取する際に、我々の体内で産生される物質であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が、がんに対するCAR-T細胞の機能を高めることが要因であることを示している。

CAR-T細胞療法では、患者自身の免疫細胞を採取し、遺伝子操作後に体内に戻してがん細胞を認識させ殺傷する。

FDA は、さまざまな種類の血液がんの治療に、いくつかのCAR-T細胞療法を承認している。

「我々の研究では、ケトン食がCAR-T細胞の機能を高めることが明らかになり、さらに、ケトン食に反応して産生される重要な代謝産物の1つであるBHBが、この効果を媒介する上で重要な役割を果たしていることを発見した」と、University of Pennsylvania(フィラデルフィア)のPerelman School of Medicineの博士研究員で、本研究の筆頭著者の1人であるShan Liu博士(PhD)は述べた。

「CAR-T細胞療法を受けた患者の約3分の2は反応が見られないか、最終的に再発することを考えると、CAR-T細胞療法と併せて比較的容易に実施可能な食事介入は非常に魅力的である」

食事は、健康全般に影響を与えるだけでなく、さまざまな種類のがん治療に対する患者の反応にも影響を与えることが知られている。

例えば、これまでの研究では、高繊維食は免疫チェックポイント阻害と呼ばれる免疫療法の効果に影響を与える可能性があることが示されている。

この新たな研究は、特定の食事介入がCAR-T細胞免疫療法の抗腫瘍効果をどのように調整するのかを調査した初めての研究である。

研究者らはまず、B細胞リンパ腫のマウスで高繊維食、高脂肪食、高タンパク食、ケトン食を含む数種類の食事をテストし、ケトン食を与えたマウスがCAR-T細胞療法後の腫瘍制御と全生存期間が最も良好であることを発見した。

その後、研究者らは、ケトン食の摂取後に増加する主要な代謝物はBHBであり、通常の食事を与えたが、BHBを補給したマウスは、CAR-T細胞の増殖に改善が見られ、BHBを補給しなかったマウスよりも腫瘍制御が良好であることを発見した。

追加研究で、BHBは、ほとんどの細胞の典型的な燃料源であるグルコースに比べ、より効率的なエネルギー源を供給することにより、CAR-T細胞の機能を高めることが示唆された。

研究者らがリンパ腫患者のT細胞を使用してCAR-​​T細胞を作製したところ、細胞培養培地にBHBを加えるとT細胞の増殖と細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの機能が高まることを発見した。

さらに研究チームは、大細胞型B細胞リンパ腫に対してCAR-T細胞療法を受けた患者17名の血液サンプル中のBHB濃度をレトロスペクティブに分析し、BHB濃度が高いほどCAR-T細胞の増殖が大きいことと相関していることを発見した。

BHBサプリメント摂取の潜在的な影響を評価するために、研究者らは健常ボランティアを募集し、BHBサプリメント摂取前後のT細胞機能を分析した。

その結果、BHBがT細胞のミトコンドリアの機能を高めることが示唆され、BHBがエネルギー処理への影響を介してT細胞の活性を高めるという仮説をさらに裏付けた。

本研究は主に実験室とマウスで行われ、CAR-T細胞療法を受けている患者への介入は行われなかったため、この研究結果の臨床的意義を判断するにはさらなる研究が必要になると研究者らは警告している。

「現時点では、我々は、CAR-T細胞療法中のケトン食導入やBHBサプリメント摂取を推奨しない」とLiu医師は述べた。同研究チームは、CAR-T細胞療法を受けているリンパ腫患者を対象に、臨床でのBHB補給の効果を検討する臨床試験をまもなく開始する予定である。

 

https://ecancer.org/en/news/25777-ash-2024-ketogenic-diet-boosts-car-t-cell-function-for-better-tumour-control

(2024年12月9日公開)

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