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e-cancer:脳腫瘍 ASCO 2025|二重標的CAR-T細胞療法が悪性脳腫瘍の増大を抑制

02 Jul 2025

二重標的CAR-T細胞療法は、極めて進行の早い悪性脳腫瘍の腫瘍増大を抑制する可能性を示した。

臨床試験中のCAR-T細胞療法後、患者の約3分の2で腫瘍が縮小した。

生存データは現在も集積中であるが、治験中の本療法を受けた複数の患者が12ヵ月以上生存しており、この患者集団の平均生存期間が1年未満であることを踏まえると注目に値する。

本研究結果は、2025年American Society of Clinical Oncology(ASCO)年次総会(抄録番号102)で発表されるとともに、University of PennsylvaniaのAbramson Cancer Centre(ACC)およびPenn’s Perelman School of Medicineの研究者らによりNature Medicine誌に掲載された。

この結果は、昨年発表された同じ第I相臨床試験に関する初期報告の有望な成果を基盤とし、米国内の他の研究者らによる類似の報告とも一致している。

膠芽腫(GBM)は、成人において最も一般的でかつ致死性の高い脳腫瘍であり、数十年にわたる集中的な研究にもかかわらず、診断後の平均余命は12~18ヵ月である。

積極的な治療を行っても、ほぼすべての患者で腫瘍は再発する。再発性膠芽腫の生存期間中央値は通常6~10ヵ月である。

「このように再発性膠芽腫が縮小するのを見るのは極めて異例である。というのも、これまで試みた免疫療法薬では実現できなかったからだ」と、血液腫瘍内科および脳神経外科助教で、主任研究者のStephen Bagley, MD, MSCEは述べた。

「臨床試験前、これらの患者の多くは腫瘍が急速に増大していたが、本治療により病勢の経過が変化し、膠芽腫患者にとって非常に意義深い結果となった」

ペンシルベニア大学が開発した二重標的CAR

CAR-T細胞療法は、患者自身の免疫細胞を用いてがんを治療する個別化免疫療法の一種である。血液がんでは広く成功を収めている一方で、脳腫瘍のような固形がんに対しては、依然として大きな成果には至っていない。

本研究で使用されたペンシルベニア大学開発のCAR-T製剤は、脳腫瘍に一般的に発現する2つのタンパク質―上皮成長因子受容体(EGFR)およびインターロイキン-13受容体α2(IL13Rα2)―を標的とする点で特徴的であり、脳脊髄液内注射により投与される。

二重標的CARは、Penn MedicineのAbramson Cancer CentreにあるGlioblastoma Translational Centre of Excellenceのディレクターであり、John Templeton, Jr., MD Professor(脳神経外科)を務めるDonald M. O’Rourke, MDの研究室で開発された。O’Rourke氏は本試験の科学顧問も務めた。

ほとんどの患者で一時的な腫瘍縮小が認められた

本研究には、再発性膠芽腫の患者18例が登録され、可能な限り腫瘍を除去する手術を受けた後、二重標的CAR-T細胞療法が脳脊髄液内に直接投与された。

術後に1cm以上の腫瘍が残存していた13例中8例(62%)で、CAR-T細胞療法後に腫瘍縮小が認められた。

ほとんどの患者では1~3ヵ月後に腫瘍が再増大したが、有望な所見も得られた。

  • 2例(11%)は、6ヵ月を超えて病勢安定の状態が持続し、現在も生存している。
  • 12ヵ月以上の経過観察が行われた7例のうち、3例(43%)が1年後も生存していた。
  • この中には、登録時に病勢進行および急速な腫瘍増大が認められていたにもかかわらず、16ヵ月以上にわたり腫瘍の増大がみられず、病勢安定が維持されている患者が1例含まれている。

研究者らはまた、本療法が投与後も免疫系内に残存し、時間の経過とともに腫瘍の増大を抑制し続ける可能性を示唆する所見を確認した。

CAR-T細胞療法後に腫瘍が再増大したため再手術を受けた1例において、研究者らは切除組織内に本療法の有効な作用を確認した。

これらの効果には、腫瘍全体へのT細胞の浸潤およびマクロファージと呼ばれる免疫細胞による腫瘍の除去が含まれていた。

研究者らは、他の患者から採取した脳脊髄液検体からも、同様に本療法が免疫系を刺激していることを示す所見を確認した。その中には、治療から1年経過後も脳脊髄液中にCAR-T細胞が検出可能であった患者も含まれていた。

「今回の結果は、われわれの二重標的療法に手応えがあることを改めて裏付けるものであり、さらに良好な成果を目指して改良を加えていくための良い基盤が得られたことを意味している」とO’Rourke氏は述べた。

「腫瘍の縮小や増大抑制による安定期は、患者の生活の質(QOL)を大きく向上させる。われわれの目標は、より多くの患者がより持続的な効果を得られるように治療法を改良することである」

本研究の最終コホートでは、CAR-T細胞療法を複数回投与し、再投与によって腫瘍の再増大までの期間が延長するかを検証する予定である。

安全性が確認され、次の臨床試験がまもなく開始予定

18例中10例(56%)でグレード3の神経毒性が認められたが、FDAが承認した他のCAR-T細胞療法で既知の副作用を超えるような、新たなあるいは予期せぬ副作用は報告されなかった。

神経毒性は適切に管理され、本療法は安全かつ実施可能であると判断された。

これらの結果に基づき、研究者らは今後の臨床試験で実施する最大耐用量を決定した。最初の試験は、新たに診断された膠芽腫患者を対象に実施される予定である。

「膠芽腫が再発する頃には、治療はさらに困難となっており、患者もすでに多くの治療を経験している」とBagley氏は述べた。「このCAR-T細胞療法を新規診断の段階で速やかに検証することで、腫瘍が治療に対してより脆弱になり、より多くの患者に恩恵がもたらされることを期待している」

本研究は、Gilead社傘下のKite社、Abramson Cancer Centre Glioblastoma Translational Centre of Excellence、Templeton Family Initiative in Neuro-Oncology、およびMaria and Gabriele Troiano Brain Cancer Immunotherapy Fundの支援により実施された。

 

https://ecancer.org/en/news/26551-asco-2025-dual-target-car-t-cell-therapy-slows-growth-of-aggressive-brain-cancer

(2025年6月1日公開)

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