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e-cancer:がん全般 ESMO 2025:COVID-19 mRNAワクチンががんと闘う免疫反応を誘発することを示す研究

28 Oct 2025

免疫療法薬の投与開始から100日以内にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した進行肺がんまたは皮膚がん患者は、ワクチンを接種しなかった患者と比べて生存期間が有意に長かったことが、研究者らにより明らかにされた。

University of FloridaおよびUniversity of Texas MD Anderson Cancer Centerの研究者らによるこの観察結果は、がんに対する免疫システムを「目覚めさせる」ために設計されたmRNAベースの治療薬を10年以上も検証してきた中で、画期的な瞬間を示すものである。

本結果は、University of Floridaの先行研究を基盤とし、免疫療法の抗腫瘍効果を高め得る普遍的ながんワクチンの開発に向けた重要な一歩を示すものである。

MD Anderson Cancer Centerで1,000例を超える患者記録の解析から得られたこの結果は予備的なものであるが、現在設計中のランダム化臨床試験で検証されれば、本研究は広範な臨床的影響を及ぼす可能性がある。

「その意義は極めて大きい。これは腫瘍学治療の全分野を変革する可能性がある」と、UF Healthの小児腫瘍科医であり、小児がん研究におけるStop Children’s Cancer/Bonnie R. Freeman教授職を務める上級研究員のElias Sayour(M.D., Ph.D.)氏は述べた。

「われわれは、免疫反応を動員してリセットする、より優れた非特異的(抗原非依存的)ワクチンを設計できる可能性がある。これは、実質的にすべてのがん患者に適用可能な普遍的な市販型(off-the-shelf)がんワクチンとなり得る」

Johns Hopkins UniversityのmRNA研究の第一人者であるJeff Coller(Ph.D.)教授は、この知見は、COVID-19に対する米国連邦政府の初期対応策の一環であった「オペレーション・ワープスピード(Operation Warp Speed)」が、「独特で予想外の方法」で米国民の命を救い続けていることを示すものであると述べた。

「この研究結果は、mRNA医薬品が実際にいかに強力であるか、そしてがん治療をいかに変革しつつあるかを示している」とColler氏は述べた。

本知見は、ベルリンで開催された2025 European Society for Medical Oncology Congress(ESMO 2025)年次総会で発表されたものであり、Sayour氏が8年間にわたり行ってきた脂質ナノ粒子とmRNAを組み合わせた研究に基づいている。

mRNAとはメッセンジャーRNA(伝令RNA)の略であり、すべての細胞に存在し、タンパク質を合成するために必要な遺伝情報を運搬する。

注目すべきことに、Sayour氏の研究室は7月に驚くべき発見を報告した。すなわち、強力な抗腫瘍反応を誘導するためには、腫瘍内の特定の標的タンパク質を狙う必要はなく、むしろウイルスと闘うかのように免疫システムを活性化させるだけでよいというものである。

いわばワンツーパンチのように、Sayour氏が特許を取得した実験的な「非特異的」mRNAワクチンと、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる一般的な抗がん剤を併用することで、マウスモデルにおいて強力な抗腫瘍反応を引き起こした。

この実験用ワクチンは、COVIDスパイクタンパク質やその他のウイルス、がんのいずれにも非特異的であったが、COVIDワクチンと同様の技術に基づいている。

この発見は、長年にわたる研究成果であり、University of FloridaのPreston A. Wells Center for Brain Tumour Therapyで研修を受け、現在はMD Andersonに所属する元研究室のメンバーで主任研究員のAdam Grippin(M.D., Ph.D.)氏に新たな疑問を抱かせた。

COVID-19 mRNAワクチンは、非特異的ワクチンと同様に作用するのだろうか。

その検証のために、研究チームは2019~2023年にかけてMD Andersonで治療を受けたステージIIIおよびIVの非小細胞肺がんおよび転移性メラノーマ患者の既存データを解析した。

その結果、免疫療法薬の投与開始から100日以内にCOVID mRNAワクチンを接種した患者では、生存期間の延長傾向が認められたことが明らかになった。

Sayour氏によると、最も顕著な違いがみられたのは、腫瘍の分子構造やその他の要因から強い免疫応答が期待できない患者群であった。

あらゆる観察研究と同様に、これらの知見は前向きかつランダム化された臨床試験による確認が必要である。

とはいえ、この発見は極めて重要である。

「因果関係がまだ証明されたわけではないが、これはわれわれが治療的介入によって目指し、期待する治療効果の一種である。しかし、それが実現することはめったにない」と、Grippin氏の博士課程指導教官であり、UF Clinical and Translational Science Institute所長を務めるDuane Mitchell(M.D., Ph.D.)氏は述べた。

「検証作業を行うことの緊急性と重要性は、いくら強調してもしすぎることはないと思う」

肺がんおよび皮膚がんにおいて、医師は通常「ブレーキを解除」して免疫システムを活性化させ、がん細胞をより効果的に認識し攻撃できるよう設計された薬剤を用いる。

しかし、進行期では、ほとんどの患者が十分な反応を示さず、放射線治療、手術、化学療法といった他の治療選択肢を既に使い果たしている場合が多い。

この新たな研究には、免疫療法薬の投与開始前後100日以内にCOVIDワクチンを接種した進行肺がん患者180例と、同じ薬剤で治療を受けたがワクチンを接種しなかった704例の記録が含まれていた。

ワクチン接種は、生存期間中央値が20.6ヵ月から37.3ヵ月へとほぼ2倍に延長することと関連していた。

転移性メラノーマ患者のうち、43例は免疫療法開始から100日以内にワクチンを接種したが、167例はワクチンを接種しなかった。

ワクチンを接種した群では、生存期間中央値が26.7ヵ月から30〜40ヵ月の範囲に延長した。データ収集時点ではまだ生存している患者がおり、ワクチンの効果はさらに強い可能性がある。一方、mRNAを使用しない肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種では、生存期間に変化はみられなかった。

研究結果を裏付けるために、UFの研究者らはマウスモデルを用いて、COVIDスパイクタンパク質を特異的に標的とするmRNAワクチンと免疫療法薬を併用した実験を行った。

これらの実験により、反応を示さなかった腫瘍を反応性のある腫瘍へと変化させ、腫瘍増殖を抑制できることが示された。

「この作用機序のひとつは、mRNAワクチンが照明弾のように免疫活性化の合図として働き、腫瘍のような免疫抑制的環境からリンパ節などの免疫活性部位へと免疫応答の流れを再集中させる点にある」とSayour氏は述べた。

次のステップとして、UFが主導するOneFlorida+ Clinical Research Networkを通じて、大規模臨床試験を開始する予定である。このネットワークは、フロリダ州、アラバマ州、ジョージア州、アーカンソー州、カリフォルニア州、ミネソタ州の病院、医療センターおよび診療所で構成されている。

「OneFloridaにおけるわれわれの主要な目的のひとつは、学術研究の場で得られた発見を、現実の臨床現場、すなわち患者が実際に治療を受ける場所へと橋渡しすることである」と、本コンソーシアムを率いるBetsy Shenkman(Ph.D.)氏は述べた。

この新たな知見が確認されれば、数多くの可能性が開かれることになり、研究者らは、さらに改良された非特異的な普遍的ワクチンを設計できる可能性があると述べている。

進行がん患者にとって、このような普遍的ワクチンによる生存期間の延長は、何ものにも代えがたい恩恵、すなわち「時間」をもたらす可能性がある。

「もしこれによって、現在得られている成果を2倍にできる、あるいは5%、10%とわずかでも上乗せできるのであれば、それは患者にとって非常に大きな意味を持つ。特に、これが異なるがん種や患者群に応用できるのであれば、なおさらだ」と、UFの McKnight Brain Instituteの研究者であるSayour氏は述べた。

本研究は、National Cancer Instituteおよび複数の財団による資金提供を受けて実施された。

 

https://ecancer.org/en/news/27155-esmo-2025-study-finds-covid-19-mrna-vaccine-sparks-immune-response-to-fight-cancer

(2025年10月19日公開)

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