進行性結腸直腸がん(CRC)における抗EGFR療法であるセツキシマブに対する耐性はKRAS変異から予測できるが、レスポンダーは一部のKRAS野生型腫瘍患者に限られており、さらなる耐性マーカーの存在が示唆される。現在、その一部がG Perkinsらの試験で特定されており、KRAS変異の有無にかかわらず、EGFR下流シグナル伝達リンタンパク質であるpMEK1とpP70S6Kの過剰発現から無増悪生存期間(PFS)の短縮が予測されることが認められた。
この試験には、腫瘍反応の評価が可能であり、腫瘍タンパク質のサンプルが得られた過去の一連の患者114名からレトロスペクティブに分析された進行性CRC患者42名(男性24名、平均年齢61.8歳)が含まれていた。患者はセツキシマブの単剤療法(n=2)またはイリノテカンとの併用療法(単独、n=37;FOLFIRIレジメン、n=2)(初回量400mg/m2の投与後、250mg/m2を週1回注入)、あるいはパニツムマブの単剤療法(n=1;2週間ごとに6mg/kg)による治療を受けた。抗EGFR治療を第1選択治療、第2選択治療、第3選択治療、第4選択治療および第5選択以降の治療として受けたのはそれぞれ1例、16例、17例、5例および3例であった。追跡調査期間の中央値は10.1ヵ月であった。完全奏効(CR)および部分奏効(PR)を示した患者をレスポンダーとみなした。KRAS変異の有無は、抗EGFR治療前に得た腫瘍サンプルの対立遺伝子判別アッセイによって求めた。特定のシグナル伝達リンタンパク質の発現はマルチプレックスLuminexビーズ免疫分析によって行い、任意単位で表した。
KRAS変異は分析した腫瘍の45%(n=19)に認められ、セツキシマブに対する反応がないことと有意に関連していた(p<0.001)。単変量解析では、PFSとOSの中央値は野生型(WT)腫瘍患者の方が変異型腫瘍患者より長く、それぞれ32週間でCI 95%[14.7〜46]vs. 8週間でCI 95%[6.1〜9](ログランクp<10-4)と13.9ヵ月、CI 95%[6.5〜21.6]vs. 6.4ヵ月、CI 95%[2.8〜10.1](ログランク検定p=0.02)であることが示された。セツキシマブに対する客観的反応は患者の28.6%に認められた(CR:1、PR:11)。
セツキシマブはEGFR受容体を標的としてそれに結合し、RAS/RAF/MAPK、PI3K/AKT、STATのようなシグナル伝達経路の活性化に関与するリガンドによって誘発されるリン酸化反応系を阻害するキメラIgG1モノクローナル抗体である。
これらの経路の活性化に関与する全てのリンタンパク質の分析では、KRAS変異型腫瘍における発現レベルはWT腫瘍より高いことが示され、pP70S6K、pGSK3BおよびpMEK1の発現が有意に高かった。セツキシマブレスポンダーではノンレスポンダーよりpP70S6Kの発現レベルが有意に低かった(それぞれ20.5 vs. 50任意単位;p=0.024)。pMEK1の発現レベルが高い患者では低い患者よりPFSが短かった(PFSの中央値:7±0.1週間、CI 95%[4.4〜12]vs. 20±3.4週間、CI 95%[8.6〜33];p=0.0001)。また、pP70S6Kの発現レベルが高い患者では低い患者よりPFSが短いことも認められた(PFSの中央値:8±0.1週間、CI 95%[8〜16]vs. 33.1±0.04週間、CI 95%[14.8〜58.1];p=0.0006)。多変量解析では、pMEK1およびpP70S6KとPFSとの関連性はKRAS変異の有無に関係ないことが示された。KRAS変異の有無別に分類すると、PFSはpMEK1ともpP70S6Kとも有意な関連性を示した(それぞれp=0.002およびp=0.01)。最後に、pP70S6Kの発現レベルが低い患者では高い患者よりOSが長かった(OSの中央値:21.6ヵ月、CI 95%[6.1〜26.3]vs. 6.5±0.1ヵ月、CI 95%[3.8〜10.5];p=0.003)。
著者らは、KRAS変異の有無に加えて、EGFR下流シグナル伝達リンタンパク質の発現レベルも進行性CRC患者におけるセツキシマブへの反応および生存の予測に重要であると結論付けた。セツキシマブの奏効率またはパニツムマブ療法はpMEK1およびpP70S6Kの発現レベルと関連していたため、著者らは、それぞれRAS/MAPK経路およびPI3K/PTEN/AKT経路の活性化がこの種の治療への耐性において重要と考えられることを示唆した。KRAS変異の有無にかかわらず、pMEK1およびpP70S6Kのリンタンパク質の発現レベルが高い患者は低い患者より生存期間が短かった。著者らは、RAS/MAPK経路およびPI3K/AKT経路は、BRAFまたはPI3KCAを含むKRAS変異以外の機構によって活性化される可能性が高いと指摘している。
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