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01 Jul 2025
多国籍研究の結果、人工知能 (AI) の活用により、病理医がHER2低発現および超低発現乳がんをより正確に分類でき、HER2陰性との誤分類リスクを低減できることが明らかになった。
これにより、より多くのHER2低発現またはHER2超低発現の乳がん患者が、予後改善が期待されるHER2標的療法を受ける選択肢を得られる可能性がある。本研究は、5月30日～6月3日にシカゴで開催された2025 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meetingで発表された。
「かつてHER2陰性とされていた乳がんの約65%は、実際には低レベルのHER2発現を示しており、現在ではHER2低発現またはHER2超低発現乳がんというサブグループに分類されている。これらの腫瘍の一部はHER2標的薬による治療が可能であるが、そのためにはHER2発現レベルを正確に検出する必要がある。
我々の研究は、AIが診断上の重大なギャップを埋めるのに役立ち、これまで治療選択肢が提供されてこなかった大多数の患者に、抗体薬物複合体などの新たな治療法への扉を開く可能性があることを示した初の多国間エビデンスである」と本研究の筆頭著者であるA.C.Camargo Cancer CenterのMarina De Brot医学博士（ブラジル、サンパウロ) は述べた。
HER2低発現およびHER2超低発現乳がん症例において、がん組織標本中のHER2タンパクを評価する従来の免疫組織化学 (IHC) 検査によって、病理医がHER2発現を正確に判定することは困難であり、時間も要する作業である。さらに、in situ ハイブリダイゼーション (ISH) は、標識プローブを用いて細胞または組織内の特定の核酸配列を検出する手法である。
HER2低発現乳がんは、HER2 IHCスコアが1+または2+かつISH陰性である。HER2超低発現乳がんは、細胞膜染色を伴うIHCスコア0である。診断の正確性は、異常を検出するための人間の目の精度に主に依存している。経験豊富な乳がんの病理医であっても、HER2超低発現乳がんの約3分の1はHER2陰性として誤って判定される可能性があり、これは通常、腫瘍内科医が抗体薬物複合体によるHER2標的療法を患者に推奨しないことを意味する。
本研究では、研究者らはComPath Academyと呼ばれるAI支援型デジタルトレーニングプラットフォームを用いて、病理医による乳がん検体のHER2スコアリングを支援した。この研究には、アジアおよび南米の10ヵ国から105名の病理医が参加し、AI支援の有無にかかわらず、20例のデジタル乳がん症例のHER2評価を行うよう課題が課された。
病理医は全5回のセッションで、合計1,940回の読影を行った。これらの読影は3回に分けて実施された評価試験中に行われた。AIによる支援は3回目の試験でのみ提供された。その後、読影結果は中央判定機関による基準IHCスコア（ground-truth） IHCスコアと比較された。Ground-truthスコアは、複数の専門病理医が独立してHER2 IHC免疫染色組織検体を評価し、合意により導き出されたものでありHER2乳がんのステータスを判定するためのゴールドスタンダードとして確立されている。
「HER2スコアの正確な判定は、乳がん患者に最適な治療を確実に提供するために極めて重要である。この国際研究は、AIを活用したアプローチによって、HER2スコアリングが改善されること、特に治療方針の決定に影響を及ぼすような状況においても有効であることを示している。これらの研究結果は、腫瘍学におけるAIの有望な役割を明らかにしている。それは医師に代わるものではなく、私たちがより効率的かつ迅速に働き、高品質で、より個別化されたケアを提供するための強力な支援ツールとしての役割である」と、University of California, San Franciscoの放射線腫瘍情報学准教授兼医療ディレクターであり、ASCOの人工知能分野の専門家でもあるJulian Hong医師（MD, MS）は述べた。
研究者らは現在、HER2低発現およびHER2超低発現乳がん患者における治療選択肢の変化や治療期間までの期間などの臨床的な下流効果を評価するために、AIツールを日常診断に組み込んだ多施設共同導入研究を計画している。
（2025年５月31日公開）
