トップ > ニュース

ニュース

e-cancer:肺がん 炎症が肺がんの初期段階を誘発する要因となっている可能性

18 Nov 2025

  • 発生の異なる時点における肺の前がん病変およびがん細胞の空間マップにより、肺がんの最も初期段階の理解を進める
  • 研究結果は、炎症が肺腫瘍の発生要因であることを示している
  • 炎症を標的とすることは、肺がん発生を阻止し、患者の予後を改善する潜在的な治療戦略となり得る

The University of Texas MD Anderson Cancer Centreの研究者らは、肺がんの発生前および発生過程における細胞・分子レベルの高解像度のビジュアルマップを作成することにより、肺がんの初期段階が炎症によって引き起こされる可能性があると発見した。これにより、炎症経路を標的とすることが早期介入の手段となり得ることが示唆された。

この研究は、11月7日Cancer Cell誌で公開され、肺がんの前がん病変および進行した段階における空間トランスクリプトミクスマップを作成することで、肺がん発生の初期段階に対する理解を深めることを目的とした。

本研究は、トランスレーショナル分子病理学教授のHumam Kadara博士と、ゲノム医療学教授であり、James P. Allison Institute™の準会員およびInstitute for Data Science in Oncologyの共同責任者であるLinghua Wang 博士が主導した。

「肺がんを引き起こす最も初期の細胞は、非常に強い炎症が認められる領域に存在し、炎症に関与する細胞に囲まれていることがわかった。炎症の中心的な要因であるIL-1Bを中和することで、肺がんの前がん段階にある細胞が減少する」とKedara氏は述べた。

「私たちの研究は、炎症を標的とすることで肺がん発生の最も初期段階を阻止し、患者の生活に影響を与え得る道を開くものである」

空間トランスクリプトミクスとは何か、そしてそれはがんの進行に関与する標的の特定にどう役立つのか?

空間トランスクリプトミクスマップは、検体内の遺伝子がどこで、どのように発現しているかを視覚的に示すものである。

前がん病変(がんに進行する可能性を持つ、初期段階の組織の増殖や変化)における細胞や遺伝子の特徴を明らかにすることで、早期介入のための潜在的な標的を特定できる。

研究者らは、患者25人から得られた56のヒト前がん病変および進行した肺がん検体の空間トランスクリプトミクスマップを作成した。

さらに、19人の患者から採取した36の病変からなる独立したコホートを利用して結果を検証し、解析には486,519のスポットおよび540万の細胞が用いられた。

この研究結果は、肺がん患者にどのように役立つのか?

研究者らは、前がん段階にある細胞と進行した肺がんを区別できる、特定の分子的変化および炎症に関連する変化や特徴を明らかにすることができた。

例えば、前がん病変内には、腫瘍に関連する肺胞細胞が存在し、炎症が強い領域が認められた。

これらの炎症が強い領域は、肺がん発生の初期段階でより活発かつ高頻度に認められ、肺がんの実験モデルでも同様に保持されていることから、これらの領域における炎症が腫瘍の発生を引き起こしている可能性が示唆されている。

研究結果は、炎症を標的とする治療、または免疫療法との併用が、肺がんに対する早期介入の有望な戦略となる可能性を示している。

 

https://ecancer.org/en/news/27228-inflammation-may-be-responsible-for-driving-earliest-stages-of-lung-cancer

(2025年11月7日公開)

教育プログラム/HIV伝播のメカニズム
CROI2024 速報
HIV感染症治療教育プログラム
Practice Updates~HIV感染症治療戦略~
HIVクイズ
Healio
ecancer
国際学会カレンダー