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16 Mar 2026
University of Cambridgeの研究者らは、腫瘍が最初に出現した際、下層の支持組織に存在する正常細胞との相互作用が、その腫瘍が生き残り、増殖し、さらに進行した疾患段階へ進展する能力を決定することを示した。
本研究はマウスで実施され、さらにヒト組織を用いて検証されたものであり、新たに形成された小さな腫瘍の一部が消失する一方で、別の腫瘍は生き残り、最終的にがんへと進展する理由を説明する可能性がある。
腫瘍は、DNAにエラー、すなわち突然変異が蓄積することで生じ、これにより細胞はより速く増殖し、本来であれば損傷した細胞が害を及ぼす前に死滅するよう指示するシグナルを無視するようになる。
しかし、これらと同じ突然変異は、がんを発症することなく、加齢に伴って健常者の組織にも蓄積することがある。
この理由を明らかにするため、University of Cambridgeの研究者らは、極めて早期の段階において腫瘍形成に影響を及ぼす追加要因は何か、また腫瘍が生き残り、がんへと進展するかどうかを決定する要因について研究を進めてきた。
研究チームによるこれまでの共同研究では、新たに形成された微小腫瘍が組織内に最初に出現した際、周囲に存在する他の変異細胞が組織内の空間を巡って競合することにより、その微小腫瘍が排除される可能性があることが示されていた。
しかし、この現象が常に起こるわけではない。
研究者らは、いわゆる「初期腫瘍(incipient tumours)」の一部がどのようにして体の防御機構を回避し、生き残って増殖し、進行した疾患が生じる条件を生み出すのかについて、長年にわたりその理由の解明を試みてきた。
この疑問に答えるため、Cambridge Stem Cell InstituteおよびUniversity of CambridgeのDepartment of Physiology, Development and Neuroscienceの研究者らが主導したチームは、マウスの上部消化管におけるがんの早期段階をモデル化した。
研究者らは、既知のがん危険因子であるタバコの煙に含まれる化学物質にマウスを曝露させることで、ヒト疾患の主要な特徴を再現した。
これにより食道の内面を覆う細胞に突然変異が生じ、微小腫瘍が形成される。その大部分は前述のとおり自然に消失するが、一部は生き残る。
その後、研究チームは、これらの発生初期の腫瘍がわずか十数個に満たない変異細胞(約10細胞)から構成される段階から、より後期の疾患段階に至るまで、経時的に追跡した。
研究者らは、高解像度共焦点顕微鏡、単一細胞RNA-seq、遺伝学的細胞追跡などのさまざまな手法を用いて、腫瘍および周囲の細胞を解析し、各細胞がどのような働きをしているのかを明らかにした。
さらに研究チームは、実験室で三次元組織を培養し、腫瘍細胞と周辺組織との相互作用をモデル化した。
Nature誌に掲載された研究結果によると、これらの初期段階において、腫瘍が周囲の線維芽細胞(下層組織に存在する支持細胞であり、いわば「応急処置」細胞)に「危険シグナル」を送ることが明らかになった。
この細胞間のやり取りは、創傷治癒によく似た反応を引き起こす。
線維芽細胞は、組織が損傷を受けたかのように振る舞い、腫瘍細胞の周囲に線維性の支持構造を形成する。
これにより、腫瘍が排除されるのを防ぎ、生存と増殖を助ける支持的な微小環境、すなわち「前がん性微小環境」が形成される。
注目すべきことに、研究者らは、この線維性支持構造だけで、がんを引き起こす突然変異が存在しない場合であっても、健常な非変異細胞に腫瘍様の性質を付与するのに十分であることを見いだした。
これは、遺伝子変化だけでなく、下層組織に存在する正常細胞がどのように応答するかによって初期腫瘍が形作られ、その結果が疾患進行に長期的な影響を及ぼすことを示唆している。
研究者らがヒトの早期食道がんの組織を解析したところ、腫瘍細胞クラスターがストレスシグナルを発している様子が認められ、さらにマウスモデルで観察されたものと同様の線維性支持構造も確認され、このメカニズムがヒトにおいても関与していることが示された。
筆頭著者の一人であるCambridge Stem Cell InstituteのGreta Skrupskelyte博士は次のように述べている。「10年前には、がんが発生するかどうかを決定するのは変異細胞そのものであると考えられていた。しかし我々の研究結果は、初期腫瘍の出現に対して正常組織がどのように応答するかも、疾患が進展するかどうかにおいて重要な役割を果たすことを示している」
研究チームが腫瘍細胞と下層組織との間のシグナル伝達を遮断したところ、前がん性微小環境は効率的に形成されず、生き残る初期腫瘍も大幅に減少することが明らかになった。
Cambridge Stem Cell InstituteのMaria Alcolea博士は次のように述べている。「新たに形成された微小腫瘍が生き残り、がんへと進展することを可能にするメカニズムを理解することで、疾患が定着する前に予防するための新たな可能性が開かれる」
「腫瘍細胞と周囲の組織とのシグナル伝達を遮断する方法を見いだすことができれば、がんの進行を食い止める新たな手段となる可能性がある」
研究者らは、これらの知見が将来的に、食道がんの早期診断の改善にも役立つ可能性があると述べている。食道がんは、治療選択肢がより限られる後期段階で発見されることが多い疾患である。
Skrupskelyte博士はさらに次のように述べた。「我々の研究の臨床的側面はまだごく初期段階ではあるが、がんをより早期に同定するのに役立ついくつかのバイオマーカー、いわば『警告サイン』を見いだした。これが検証されれば、食道がんをより早い段階で発見できる可能性があり、その段階であれば治療ははるかに容易になる」
(2026年3月5日公開)